2026年5月28日、日本アフェレシス学会 AI利活用勉強会(AIUS)第3回定例会がWeb会議形式にて開催されました。
本勉強会では、アフェレシス領域におけるAI技術の実装をテーマに、標準化支援アプリ、レジストリ自動入力、リアルタイム翻訳、AIニュース発信など、多岐にわたるプロジェクトについて議論が行われました。
医療AIの「研究」から「現場実装」へとフェーズが移行しつつある現在、今回の定例会では、実践的かつ臨床現場に直結した取り組みが数多く共有されました。本記事では、その内容を活動報告としてまとめます。
参加者:
内山 陽介 先生(済生会横浜市東部病院)
硴﨑 裕晃 先生(SB Intuitions株式会社)*オブザーバー
片桐 大輔 先生(国立国際医療研究センター)
草生 真規雄 先生(順天堂大学)
鯰田健一朗様(旭化成メディカル)*オブザーバー
西山悠登先生(国立国際医療研究センター)
福永昇平先生(東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)
山田博之先生(京都大学 初期診療・救急科)
以上 8名(五十音順)

新規委員の参加により体制を強化
今回の定例会では、新たに国立国際医療研究センター所属の西山悠登先生、旭化成メディカル株式会社より鯰田健一朗氏の2名の委員がAIUSへ参加したことが報告されました。
西山先生は現在、静岡県立総合病院にて腎臓内科レジデントとして研修を行っており、若手医療従事者ならではの視点からAI活用への貢献が期待されています。
また、鯰田氏はオブザーバーとしての参加で、米国医療機器AI技術調査ワーキング(AAMI/MT Japan)にも所属しており、医療機器領域におけるAI動向に精通されています。
AIUSでは、臨床医のみならず、企業・研究機関・エンジニアリング分野との連携を積極的に進めており、今回の新規参加によって、さらに多角的な議論が可能となることが期待されます。
アフェレシス標準化アプリ開発が本格始動
今回の会議において特に注目を集めたテーマの一つが、「アフェレシス標準化支援アプリ」の開発構想です。
アフェレシス治療は高度な専門知識を必要とする一方で、施設間格差や専門医不足が課題として指摘されています。
特に、専門外の医師がアフェレシス治療に関与する場面では、判断支援ツールの必要性が高まっています。
こうした背景のもと、現在開発が進められているのが、最新ガイドラインを学習させたAIチャットボット型支援アプリです。

このアプリでは、医師が臨床現場で疑問点を入力すると、ガイドラインベースの回答をリアルタイムで提示する仕組みが検討されています。
いわば「アフェレシス領域専用AIアシスタント」とも言える存在です。
現在は以下の作業が進行中との報告がありました。
- 回答精度の評価
- UI/UX改善
- ロゴ作成
- ベータ版準備
さらに、2026年11月開催予定のアフェレシス学会での発表も視野に入れられており、AIUS委員向けの限定ベータテストも計画されています。
一方で、運営面の課題として、API利用料金など継続的なコスト負担が挙げられました。
現状では研究費申請や個人負担で対応しているものの、今後の安定運営に向けた財源確保が重要課題です。
レジストリ自動入力プロジェクトが前進
次に報告されたのは、アフェレシス施行記録からデータを自動抽出し、REDCapへ登録するシステム開発についてです。
医療現場では依然として手入力作業が大きな負担となっており、レジストリ入力業務の効率化は多くの施設で共通課題となっています。
今回紹介されたプロジェクトでは、以下のようなワークフローの構築を目指しています。
施行記録をスキャン
OCRで数値抽出
CSV化
REDCapへ自動登録
特に注目されたのが、MITライセンスの国産OCRエンジン「sarashina 2.2 OCR」の活用です。
このOCRは、
- 表形式データに強い
- 手書き文字にも対応
- ローカル環境で利用可能
という特徴を持ち、医療情報の安全性や機密性を重視する現場との親和性が高い点が評価されました。
また、順天堂大学のREDCapライセンスを利用したテスト環境構築も進行中であり、実運用に向けた準備が進められています。
医療AIにおいて「生成AI」が注目される一方、こうした業務効率化AIもまた、現場負担軽減に直結する重要な領域であることが再認識されました。
GPTリアルタイム翻訳モデルの医療応用
続いて議論されたのは、OpenAIのGPTリアルタイム翻訳モデルを活用した多言語コミュニケーション支援アプリについてです。
簡易的なコーディングでどれほどの精度のアプリケーションが作れるのか、Codexを用いたバイブコーディング(自然言語を用いて開発する手法)の可能性について検証を進めています。
近年、日本の医療現場では外国人患者さんを診察したり、外国人医療従事者と協働するなどといった機会が増加しており、医師のみならず看護師、事務職員にとって言語の壁は現場課題の一つとなっています。
今回検討されているシステムでは、
- リアルタイム音声翻訳
- 医療用語への対応
- 双方向コミュニケーション
などが想定されており、臨床現場での実用性が期待されています。
また、将来的にはAIUSで作成した開発フォーマットやテンプレートをGitHub等を通じて公開する構想も共有されました。
これは単にAIUS委員が用いるローカルな院内ツールにとどまらず、全国の医療現場へ知見を還元するオープンソース的発想として意義があると考えられます。
次回会合では、実際の使用感や課題について検証結果が報告される予定となっています。
AIニュース発信の高度化へ
AIUSでは、単なる勉強会にとどまらず、継続的な情報発信にも力を入れています。
現在、日本アフェレシス学会Webサイト内にはAIUS専用ページが設置され、
- 定例会議事録
- 週次AIニュース
- AI関連情報
などが公開されています。
今回の会議では、委員から、「AIニュースのショート動画化」、「投稿に対する「いいね」機能などリアクション機能追加の提案」が提案されました。これは情報発信をさらに発展させるアイデアとして注目されました。
AIエージェントを用いてニュース内容を短尺動画へ変換することで、
- SNS拡散性向上
- 若手層へのリーチ
- 情報取得ハードル低下
などが期待されています。
また、投稿に対する「いいね」機能などリアクション機能の追加は、投稿者のモチベーション向上だけでなく、コミュニティ形成の観点からも重要です。
AI時代における学会活動は、「情報を出す」だけでなく、「参加型コミュニティを形成する」方向へ進化していることが感じられる議論となりました。
Codexベースの医療機器支援AIデモも実施
会議終盤では、委員よりアフェレシスや透析療法で用いる血液浄化装置の取扱説明書を読み込ませたCodexベースAIアプリのデモンストレーションが行われました。
このアプリでは、装置アラームに対する対応方法を即座に提示できる仕組みが構築されており、添付文書ベースの正確な作業支援を目的としています。
医療機器の操作は高度かつ複雑であり、特に経験の浅いスタッフにとっては心理的負担となる場合があります。
こうしたAI支援が実装されれば、
- 教育コスト削減
- ヒューマンエラー低減
- 業務標準化
など多くのメリットが期待されます。
また、マニュアル検索型AIは今後さまざまな医療機器への応用可能性を持っており、医療現場における「AIナレッジ支援」の新たな形として注目されます。
今後の展望
今回のAIUS定例会では、単なるAI活用アイデアにとどまらず、実際の医療現場へ実装可能なプロジェクトが数多く共有されました。
特に印象的だったのは、
- ガイドライン支援AI
- OCRによる自動入力
- 多言語翻訳AI
- 医療機器支援AI
- AIニュース自動発信
など、「現場課題に直結するAI」が数多く議論されていた点です。
医療AIはしばしば「未来の技術」として語られますが、AIUSで進められている取り組みは、すでに「現場で使うAI」の段階へ入りつつあります。
今後は、
- 運営コスト問題
- セキュリティ対応
- 実臨床での検証
- UI/UX改善
- ガバナンス整備
なども重要テーマとなるでしょう。
AIUSでは、今後も定例会を通じて、医療現場に根差したAI利活用を推進していく予定です。
医療AIの進化は、もはや一部の専門家だけの話ではありません。
現場の医療従事者自身がAIを理解し、活用し、改善していく時代が始まっています。
今後の活動にもぜひご注目ください。
- 本記事は、生成AIツールの一般的な利用開始方法と活用の考え方を紹介するものです。各サービスの機能、料金、利用上限、データの取り扱いは変更される可能性があります。最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。
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