【26/6/12】週刊 AI関連ニュースまとめ

目次

厚労省、医療機関にAI時代のサイバー対策強化を要請

厚生労働省は5月27日、全国の医療機関に向けて、サイバーセキュリティ対策の強化を求める注意喚起を発出しました。
背景には、高性能AIがサイバー攻撃に悪用された場合、攻撃の速度や規模が大きく拡大する可能性があるという懸念があります。

医療機関では、電子カルテや医療機器、院内ネットワークなどが停止すると、診療継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
そのため厚労省は、経営層のリーダーシップのもとで、改めてセキュリティ体制を確認・強化するよう求めています。

重点項目としては、ランサムウェア対策、バックアップ体制、復旧訓練、セキュリティパッチ管理、インシデント発生時の対応体制整備などが挙げられています。
また、職員向けのセキュリティ教育や、標的型メール攻撃を想定した訓練の重要性も強調されています。

生成AIやフロンティアAIは、医療現場の業務効率化を支える一方で、サイバー攻撃の高度化にもつながり得ます。
今後は、AIを「活用する力」だけでなく、「安全に運用する力」も、医療機関にとって重要になっていくと考えられます。

参考:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/cyber-security.html


MicrosoftとNVIDIA、ローカルAIエージェント基盤を発表

NVIDIAとMicrosoftは6月2日、Windows PC上でAIエージェントを安全に動作させるための新たな開発基盤を発表しました。

近年のAIエージェントは、単なるチャット応答だけではなく、ファイル操作やアプリ間連携など、自律的な作業を行う方向へ進化しています。
一方で、こうした機能には、意図しないファイルアクセスや情報漏えいといったリスクも伴います。

今回Microsoftが発表した「Microsoft Execution Containers(MXC)」は、AIエージェントがアクセス可能な範囲を制御する仕組みです。
NVIDIAもWindows向けのOpenShellを提供し、安全なAI実行環境の整備を進めています。

また、RTX Spark搭載PCなど、ローカル環境で大規模AIモデルを動作させるハードウェアも発表されました。
これにより、患者情報や研究データをクラウドに送信せず、院内環境でAIを活用できる可能性が広がります。

医療分野では、AI活用と個人情報保護をどのように両立するかが大きな課題です。
今回の発表は、「高性能なAI」だけではなく、「安全に利用できるAI基盤」が今後ますます重要になることを示しているといえるでしょう。

参考:
https://developer.nvidia.com/blog/build-personal-ai-agents-on-windows-pcs-with-new-tools-from-microsoft-and-nvidia/


日米、AI for Scienceで総額10億ドル規模の連携を発表

米国エネルギー省(DOE)と、日本の文部科学省・経済産業省は6月4日、「AI for Science」を推進する大規模な日米戦略的パートナーシップを発表しました。
今後5年間で、日米合計10億ドル規模の投資が計画されています。

この取り組みでは、量子科学、核融合、バイオテクノロジー、先進材料、素粒子物理学など、多様な研究分野でAI活用を進める予定です。
米国DOEの研究機関群と、日本の主要研究機関が共同研究チームを構成し、「富岳」を含むスーパーコンピューター資源も活用されます。

今回の特徴は、「AIそのものを開発する」のではなく、「AIを使って科学研究を加速する」という点にあります。
実験設計、自律型研究システム、材料探索、創薬支援など、研究プロセス全体の効率化が期待されています。

医療・ライフサイエンス分野においても、AI創薬やバイオ研究の高度化につながる可能性があります。
短期的な製品化というよりも、将来的な研究基盤を整備する国家レベルの長期戦略として、今後の動向が注目されます。

参考:
https://www.energy.gov/articles/united-states-and-japan-announce-historic-1-billion-partnership-under-president-trumps


NVIDIA調査、医療AIは「実証」から「実運用」の段階へ

NVIDIAは、医療・ライフサイエンス分野におけるAI活用状況をまとめた調査レポート「State of AI in Healthcare and Life Sciences: 2026 Trends」を公開しました。

調査によると、回答者の70%が「自組織でAIを積極的に活用している」と回答しており、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の利用も69%に達しています。
また、エージェント型AIについても、約半数が利用または評価中と回答しました。

活用領域としては、医用画像解析、創薬、臨床意思決定支援、ワークフロー最適化などが挙げられています。
さらに、経営層の多くが、AIによる売上増加やコスト削減効果を実感しており、AI関連予算を増額予定とする組織も増えています。
また、回答者の82%がオープンソースモデルやソフトウェアがAI戦略において中等度以上に重要だと回答しています。

この調査は半導体開発企業のアンケート調査からの結果発表で、回答者にはAI活用に積極的な層が多く含まれている可能性もあり、医療業界全体をそのまま反映しているわけではありません。
ただ、少なくとも先進的な医療機関やライフサイエンス企業では、「AIを試験導入する段階」から、「成果を求めて本格運用する段階」へ移行しつつあることがうかがえます

参考:
https://blogs.nvidia.com/blog/ai-in-healthcare-survey-2026/


EU AI法、医療AIにも影響する包括的ルール整備が進行

EU AI法(AI Act)は、AIをリスクに応じて分類・規制する、世界初の包括的AI法制として注目されています。
現在、規定ごとの段階的な適用が進められています。

特徴的なのは、AIを一律に規制するのではなく、「禁止されるAI」「高リスクAI」「透明性義務のあるAI」「低リスクAI」に分類している点です。
医療分野では、AI医療機器や診断支援システム、救急トリアージ支援などが、高リスクAIに該当する可能性があります。

高リスクAIには、リスク管理、データ品質管理、ログ保存、人による監督、サイバーセキュリティ対策など、厳格な義務が求められます。
また、ChatGPTのような汎用AIモデルについても、情報開示やリスク管理などの責任が課されます。

さらに、AI生成コンテンツについては、「AIによって生成されたものである」ことを利用者に明示する透明性義務も導入されます。
これは、医療文書生成AIや患者向けチャットボットにも影響する可能性があります。

EUの制度ではありますが、今後の国際的なAIガバナンスの基準となる可能性も高く、日本の医療機関や研究者にとっても参考になる重要な動きといえそうです。

参考:
https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/regulatory-framework-ai


今週のまとめ

今週のニュースを振り返ると、医療AIは「導入するかどうか」の段階から、「どのように安全に運用するか」を考える段階へ進みつつあることが感じられます。

生成AIやエージェント型AIの活用が広がる一方で、サイバーセキュリティ、説明責任、個人情報保護、ガバナンス整備の重要性も急速に高まっています。

今後は、AIの性能だけではなく、「安心して使えること」や「適切に管理できること」が、医療AI活用における重要な評価軸になっていくのかもしれません。

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