【26/7/3】週刊 AI関連ニュースまとめ

目次

米ARPA-H、心不全患者向け臨床AIエージェント「ADVOCATE」を開始

米国保健福祉省(HHS)傘下の先進医療研究機関ARPA-Hは、心不全や心筋梗塞後の患者を継続的に支援する臨床AIエージェント開発計画「ADVOCATE」を開始しました。

電子カルテやウェアラブル端末と連携し、患者からの質問への回答や服薬・生活指導、受診支援、診断・治療方針の提案まで幅広い役割を担うことを想定しています。
また、AIの判断を監視する「監督エージェント」も並行して開発され、判断の妥当性や安全性、介入リスクなどを継続的に評価する仕組みが組み込まれます。

39か月にわたるプログラムでは、試作システムの評価、医療機関での実装、実環境での有効性・安全性検証を段階的に進め、FDA認可を視野に入れた初の本格的な臨床エージェント型AIの実現を目指しています。
一方で、医療専門職の代替ではなく、医師による適切な監督の重要性も指摘されています。

参考:
https://arpa-h.gov/explore-funding/programs/advocate

米医療機関でAI活用が拡大──診療記録からMRI、臨床試験まで

米オレゴン州のセント・チャールズ・ヘルスシステムでは、診療記録作成、MRI画像再構成、臨床試験候補患者の抽出という異なる領域でAI活用が進んでいます。
診療記録支援AI「DAX」は診察中の会話をもとに記録案を自動作成し、医師は確認・修正のみで済むため、記録作成時間の大幅な短縮が期待されています。

院内アンケートでは、医療者の燃え尽き感や職務満足度、患者満足度の改善も報告されました。
また、AIによるMRI画像再構成では画質を維持したまま検査時間の短縮を目指し、がん領域ではLLMを活用して臨床試験の候補患者を効率的に抽出する取り組みも始まっています。

診断支援だけでなく、日常業務の効率化を支えるAIの実装が広がっていることを示す事例といえます。

参考:
https://www.bendsource.com/news/localnews/ai-tools-used-as-smart-medical-assistants/

Nature Medicine研究、汎用LLMが医療特化AIを上回る結果

Nature Medicine誌に掲載された比較研究では、GPT-5.2、Gemini 3.1 Pro、Claude Opus 4.6などの汎用LLMが、医療特化型AIサービスを複数のベンチマークで上回る性能を示しました。
医学試験問題や医療QAに加え、実際の医師が評価した臨床質問でも高い評価を獲得しています。

一方で、有害回答やハルシネーションの発生率には大きな差は認められず、この研究は臨床現場での安全性や患者転帰を比較したものではありません。
また、比較対象となった医療AIはFDA認可済み医療機器ではなく、「未認可LLMが認可済みAIを上回った」と解釈することは適切ではありません。

AIモデルの進化が非常に速い現在、導入時だけでなく継続的な性能評価や再検証の重要性を示した研究として注目されています。

参考:
https://www.nature.com/articles/s41591-026-04431-5

OpenAI、「GPT-5.6」を限定公開

OpenAIは次世代モデル「GPT-5.6」を発表し、「Sol」「Terra」「Luna」の3モデルについて一部企業・組織を対象とした限定プレビューを開始しました。

公開前には米政府へモデルの能力を提示し、政府からの要請を受けて信頼できるパートナーへの段階的な提供を実施しています。

背景には、AIのサイバーセキュリティ能力が急速に向上し、安全保障上の影響が大きくなっていることがあります。
ただし、政府による事前承認制度が導入されたわけではなく、企業の協力は任意とされています。

OpenAIも、政府との安全性評価には一定の意義を認める一方、こうした仕組みが恒常化すれば研究開発やAI活用のスピードを損なう可能性があると指摘しており、安全性とイノベーションの両立が今後の重要なテーマとなりそうです。

参考:
https://openai.com/index/previewing-gpt-5-6-sol/

日本、AI国際協力を拡大し「AI自律性」の強化へ

日本政府はフランス、インド、英国、ブラジル、マレーシアなどとのAI協力を相次いで開始しました。
AI開発、人材育成、データ基盤、計算資源、AIガバナンスなど幅広い分野で協力を進め、自国でAIを継続的に開発・運用できる能力の強化を目指しています。

報道では「米中依存からの脱却」と表現されることもありますが、政府が掲げる目的は供給網の多様化やAI分野での自律性・競争力の向上です。

現時点では多くが対話や協力枠組みの設置段階にありますが、今後は共同研究やAIモデル開発、人材交流など具体的なプロジェクトへ発展するかが注目されます。

参考:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_03850.html

日本、フィジカルAIへ2040年度まで10.5兆円投資を想定

政府はフィジカルAI、とくにAIロボット分野について、2040年度までに官民合わせて10.5兆円規模の投資を想定するロードマップを公表しました。

対象にはロボット本体だけでなく、モーターやセンサーなどの重要部品、AIモデル開発、社会実装に向けた設備投資まで含まれます。また、医療・介護、物流、防災、製造業などへの導入を促進し、国内需要の創出も目指しています。
政府は2040年にAIロボット世界市場の30%超を獲得する目標を掲げていますが、この金額は現時点での想定規模であり、確定した予算ではありません。

日本の製造業の強みを生かし、フィジカルAI分野で国際競争力を高められるかが今後の焦点となります。

参考:
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2026/0624_shiryo01.pdf

Gemini 3.5 Pro、提供時期が7月へ延期か

Business Insiderは、Googleの次世代モデル「Gemini 3.5 Pro」の提供開始が、当初予定されていた6月から7月へ延期される見通しと報じました。

Googleは正式な延期を発表していませんが、初期テスターから寄せられたフィードバックや実際の利用状況を踏まえ、追加調整を進めているとされています。

Gemini 3.5 Proは長時間にわたるタスクやAIエージェント機能の強化が期待される上位モデルであり、先行公開されたGemini 3.5 Flashへの利用者の意見も改善に反映される見込みです。
正式な提供開始時期や最終的な性能には引き続き注目が集まります。

参考:
https://www.businessinsider.com/google-3-5-pro-july-release-tokens-ai-agents-model-2026-6

中国「GLM-5.2」、脆弱性検出で高い性能を示す

中国のZhipu AIが公開したオープンウェイトモデル「GLM-5.2」は、Semgrepによる脆弱性検出ベンチマークでClaudeを上回る結果を示しました。

もっとも、この評価は特定の脆弱性カテゴリーを対象としたものであり、すべてのタスクで優位性を示したわけではありません。
また、評価結果からはモデル自体の性能だけでなく、探索手法や実行環境の設計も大きく影響することが示されています。

MITライセンスで公開されているため地域を問わず利用できる点も特徴であり、高性能なオープンウェイトモデルの普及が、従来のAIアクセス規制のあり方に新たな課題を投げかけています。

参考:
https://semgrep.dev/blog/2026/we-have-mythos-at-home-glm-52-beats-claude-in-our-cyber-benchmarks/

米主導「Pax Silica」が拡大、AI供給網の安定化へ

米国はAIや半導体、重要鉱物、データセンターなどの供給網を強化する国際構想「Pax Silica」を拡大し、新たに10のパートナーが参加しました。

会議では物理的な供給網だけでなく、先端AIモデルへの継続的なアクセスも重要なテーマとなり、インドはAIサービスが突然利用停止となるリスクについて懸念を表明しています。
背景には、高性能AIモデルへのアクセスが政策変更によって停止された事例があり、AIモデルそのものが新たな経済安全保障上の資源として認識され始めています。

今後は、国家安全保障と国際的な技術協力をどのように両立するかが重要な論点となりそうです。

参考:
https://www.state.gov/releases/office-of-the-spokesperson/2026/06/outcomes-of-the-second-pax-silica-summit


今週のまとめ

今週は、医療現場でAIを実際の診療に組み込む動きと、AIを支える政策・供給網・基盤技術の整備が同時に進展した一週間となりました。
臨床AIエージェントの開発、医療現場での業務支援、LLMの性能向上など、AIの実用化は着実に前進しています。

一方で、安全性評価や規制、国際協力、AIへの継続的なアクセス確保など、新たな課題も明確になっています。

今後は技術革新だけでなく、制度や運用を含めた総合的なAI活用が医療分野でも重要になっていくでしょう。

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