Northwestern Medicine、医療AI検索「OpenEvidence」を電子カルテに統合――多職種での利用を開始
米国のNorthwestern Medicineは10月12日、AI医学情報検索サービス「OpenEvidence」を電子カルテシステム「Epic」に直接統合したと発表しました。
10月8日から、医師、看護師、薬剤師、高度実践医療職などを対象に利用を開始しています。
OpenEvidenceは、自然言語で入力した医学的な質問に対し、医学論文や診療ガイドラインを参照して、出典付きの回答を提示するサービスです。
今回の統合では、電子カルテのメニューや患者カルテ画面から直接起動でき、病院の既存アカウントによるシングルサインオンにも対応しました。
薬剤の投与量や相互作用、最新の治療方針などを、日常の診療業務の流れで調べられる仕組みです。
注目されるのは、検索のたびに別のサービスへ移動してログインする負担を減らし、共通の情報検索環境を多職種に提供した点です。
AIの回答性能だけでなく、現場で必要なときに使いやすいことも、医療機関への定着を左右すると考えられます。
ただし、今回確認されているのは電子カルテからの直接起動であり、患者情報の自動取得や診療記録への自動書き込みではありません。
診療時間や患者アウトカムへの効果も未公表です。
引用文献と回答の整合性、個々の患者への適用可能性は、引き続き医療従事者が判断する必要があります。
Anthropic、対話で分析・可視化する「Claude Dashboards」と説明動画を作る「Claude Motion」を発表
Anthropicは10月8日、自然言語でデータを分析する「Claude Dashboards」と、説明用アニメーションを生成する「Claude Motion」のベータ提供を開始しました。
分析から資料作成までを、AIとの対話で進める機能です。
Claude Dashboardsは、BigQueryやSnowflakeなどのデータ基盤と接続し、利用者の指示に応じてデータを取得・分析・可視化します。
作成したダッシュボードは接続先データの変更に応じて更新され、数値の算出に使ったクエリも確認できます。
SQLを自分で書かずに分析できる一方、計算の根拠をたどれる設計です。
Claude Motionは、文章やグラフ、画像などから短い説明用アニメーションを作成します。
映像生成モデルではなく、アニメーションを動かすコードを生成する方式で、文字や数値、動きのタイミングを編集し、MP4形式で出力できます。
Dashboardsは有料プラン、MotionはTeam・Enterpriseプランで提供されます。
また、Claude Docs・Slides・Designも正式提供へ移行しました。
医療機関では、診療件数や病床稼働率の可視化、教育・研究発表用の説明資料などへの応用が考えられます。
ただし、医療専用の機能ではなく、患者情報の取り扱いやアクセス権限の確認が前提です。
集計対象や分母の定義が異なれば結果の意味も変わるため、生成された分析処理を検証できる体制が求められます。
参考:Anthropic発表
JAMA、医療従事者95万人のAI検索を解析――医師の質問は「診断」より「治療・管理」が中心
Harvard Medical Schoolなどの研究チームは10月15日、OpenEvidenceの大規模な利用履歴を解析した研究をJAMAに発表しました。
実際の医師のAI利用では、診断よりも治療・管理方針に関する情報検索が多いことが示されました。
対象は、2024年1月から2026年6月までに利用した米国の医療従事者952,008人で、うち医師は556,200人でした。
累積質問数は約2億7,100万件に上り、このうち層化無作為抽出した約3,880万件を、大規模言語モデルで分類しています。
医師の質問の51.9%は臨床意思決定に関する内容でした。
なかでも、治療選択や薬剤調整、副作用への対応などの「治療・管理」が33.1%を占め、「診断」の13.9%の約2.4倍でした。
個別患者の治療判断を伴わない一般的な薬剤情報の照会も14.1%ありました。
また、卒後10年以内の医師の質問量は、全米医師数に占める割合から予想される量の2.54倍でした。
専門外の質問も多く、AIが日常診療で不足する知識を補う手段として使われている可能性があります。
医療AIの評価でも、診断精度に加え、治療や薬剤情報を適切に提示できるかが重要になります。
ただし、単一サービスの質問履歴を分析した研究であり、回答の正確性や診療への影響は評価していません。
OpenEvidenceの社員・幹部が研究に参加し、同社がデータ提供と解析に関与している点にも留意が必要です。
参考:JAMA掲載論文
Nature Medicine、患者と医療機器をつなぐ対話型AIを報告――てんかん患者13人で実証
ペンシルベニア大学の研究チームは10月13日、患者が医療機器の測定データについてAIと対話できるプラットフォームをNature Medicineに報告しました。
リアルタイムの脳波解析と生成AIを組み合わせ、てんかん患者13人を対象に前向き実証研究を行っています。
患者はスマートフォンから脳波や睡眠、発作に関する質問を入力でき、AIからの通知に対して症状や体調を報告できます。
会話機能には、HIPAAに対応したクラウド環境上のGPT-4o-miniを使用しました。
研究中には患者から407件、AIから900件、合計1,307件のメッセージが交わされ、通常の応答は約2秒、グラフなどを伴う照会は約9秒でした。
さらに、患者の報告を発作検出モデルの改善に使う仕組みも検証しました。
過去データによる疑似前向きシミュレーションでは、患者からのフィードバックによって偽警報を約80%減らせたと報告されています。
ただし、これは13人の実証研究中に同じ改善効果を確認したという意味ではありません。
患者自身の症状や生活情報を測定データと組み合わせられる点は、機器による記録だけでは捉えにくい状況を補う可能性があります。
一方、今回の実証は単一施設の入院患者を対象とした短期間の研究です。
発作や生活の質の改善、長期在宅利用での安全性は未検証であり、対話の正確性や見逃しのリスクを含めた評価が必要です。
SB Intuitions、国産AI「Sarashina」の無償ベータ版を公開――医療特化型モデルの研究も進行
SB Intuitionsは10月13日、国産大規模言語モデル「Sarashina」シリーズを試用できるサービスの無償ベータ版を公開しました。
開発者向けのAPIに加え、ブラウザから対話や日英翻訳を体験できます。
提供するのは、対話・文章生成向けの「Sarashina3 mini」、高速処理向けの「nano」、文書検索用の「embedding」、検索順位を調整する「rerank」、安全性判定用の「guard」、日英翻訳用の「translate」の6モデルです。
利用回数には制限がありますが、事前申し込みなしで試用できます。
同社によると、miniとnanoは既存の海外モデルの改良ではなく、独自の事前学習から開発され、日本語・英語を中心に約30兆トークンを学習しています。
一部の日本語評価で海外の主要モデルを上回ったとしていますが、開発企業による評価として捉える必要があります。
医療分野では、別の取り組みとして順天堂大学などと「Med-Sarashina」を用いた共同研究が進んでいます。
臨床推論や医学教育のデータで追加学習・検証を行い、研修医教育などへの活用を目指すものです。
この医療特化型モデルは、今回公開された6モデルには含まれません。
日本語の院内文書検索や教育支援への応用は考えられますが、国産であること自体が医学的正確性や安全性を保証するわけではありません。
一般向けベータ版では入力データがサービス改善に使われる場合があり、患者情報を扱う環境とは区別して検討する必要があります。
DeepSeek、新モデル「V4.1-Flash-1017」を公開――AIエージェントの性能と実行コストを改善
DeepSeekは10月17日、「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」を公開しました。
プログラミングや推論、AIエージェントによる業務処理を改善したモデルで、重みをMITライセンスで公開し、Web・アプリ・APIでも提供しています。
モデルは、必要な部分だけを動かすMixture of Experts(MoE)構造を採用しています。
基本モデルのパラメータ数は5,520億ですが、1トークン当たりに動作するのは入力処理時で約80億、出力生成時で約160億です。
モデル全体を毎回動作させず、処理能力と効率の両立を目指しています。
同社の評価では、ソフトウェア修正を測るDeepSWE v1.1で77.0点となり、Claude Opus 5の74.0点、GPT-5.6 Solの73.0点を上回りました。
業務自動化の評価でも高い成績を示しましたが、ほかの評価ではOpus 5が上回っており、全面的な優位性を示すものではありません。
実行コストも特徴で、ソフトウェア修正の評価では、正答率77.0%の設定で1タスク約0.20ドル、低コスト設定では約0.10ドルで72%超と報告しています。
いずれも特定の評価条件による数値で、一般的な業務の費用を保証するものではありません。
複数の検索や処理を繰り返すAIエージェントでは、精度に加えて累積費用が導入を左右します。
研究支援などへの応用を考えるうえで参考になる動きですが、今回の評価は医療性能を検証したものではなく、第三者による性能評価や、用途に応じた情報管理の確認が必要です。
参考:DeepSeek発表
今週のまとめ
今週は、AIを日常業務の中で使うための仕組みが広がりました。
電子カルテからの医学情報検索、対話によるデータ分析、患者と医療機器の双方向のやり取りなど、利用者が必要な情報にアクセスする方法そのものが変わりつつあります。
OpenEvidenceの利用履歴では、医師の質問は診断よりも治療・管理に多く向けられていました。
医療AIの価値を見極めるには、試験問題やベンチマークの成績だけでなく、現場の疑問に正確に答え、業務に無理なく組み込めるかを評価することが重要です。
国産モデルの公開や実行コストの低減は、導入の選択肢を広げます。
ただし、利用できること、精度が高いこと、患者利益につながることは、それぞれ別の検証課題です。
製品提供、利用実態、実証研究の成果を区別して読み解く姿勢が求められます。
- 本記事は、生成AIツールの一般的な利用開始方法と活用の考え方を紹介するものです。各サービスの機能、料金、利用上限、データの取り扱いは変更される可能性があります。最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。
- 患者情報、個人情報、機微情報を扱う場合には、所属機関の規程および関連法令・倫理指針に従ってください。


