【26/8/21】週刊 AI関連ニュースまとめ①

今週はニュースを3本に分けてご案内いたします。

目次

Alibaba、2.4兆パラメータの最上位モデル「Qwen3.8-Max」を発表――画像・動画と長時間タスクに対応

Alibabaは2026年8月3日、Qwenシリーズの最上位AIモデル「Qwen3.8-Max」を発表しました。
総パラメータ数は2.4兆、最大コンテキスト長は100万トークンで、テキストだけでなく画像や動画も扱えるネイティブ・マルチモーダルモデルです。

Qwen3.8-Maxは、入力に応じて必要な専門部分だけを動かすSparse Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用しています。
2.4兆の総パラメータのうち、推論時に活性化されるのは約950億パラメータです。
モデルの規模を大きくしながら、すべてのパラメータを毎回使用する場合と比べて、計算量を抑える設計となっています。

Alibabaは、コーディングや研究、実務を長時間にわたって自律的に進める能力を特に強調しています。
社内実験では、約16日間にわたってソフトウェア開発を継続し、265件のコミットと127件のプルリクエストを作成しました。
別の実験では、既存の研究論文だけを手がかりに実験環境を構築し、約125時間で33回のGPU訓練を行い、主要な結果を再現したと報告されています。

医療分野では、長大な文献やガイドラインの整理、画像を含む研究資料の解析、研究コードや実験環境の構築支援などへの応用が考えられます。
100万トークンのコンテキストとマルチモーダル対応は、複数形式の資料をまとめて扱う業務との相性がよい可能性があります。

一方で、これらは主にAlibabaによる社内評価や実演事例であり、医療データを用いた臨床性能や安全性が示されたわけではありません。
長時間自律的に動作できることと、途中の判断が正確であることも別の問題です。
研究や医療業務で利用する場合は、処理過程の記録、人による確認、患者情報の取り扱いなどを含めた運用設計が必要です。

発表時点では後日公開予定だったモデル重みも、8月17日に「Qwen3.8-2.4T-A95B」としてHugging FaceおよびModelScopeで公開されました。
最上位クラスのモデル重みが公開されたことで、第三者による評価や派生モデルの開発が進むかどうかも注目されます。

参考:Alibaba Cloud・Qwen3.8-Max発表
参考:Alibaba Cloud・モデル重み公開


OpenAI、無料版ChatGPTを「GPT-5.6 Luna」へ移行――通常のテキストチャットを無制限化

OpenAIは2026年8月6日、ChatGPTのFreeおよびGoユーザーに提供する既定モデルを「GPT-5.6 Luna」へ順次変更し、通常のテキストチャットを無制限で利用できるようにすると発表しました。
GPT-5.6 Lunaは、GPT-5.6ファミリーの中で高速性と低コストを重視したモデルです。

無制限化の対象となるのは、通常のテキストによる会話です。
ファイルアップロード、画像生成、音声、データ分析などの機能には、それぞれ個別の利用上限が残ります。
また、無制限のテキストチャットについても、悪用を防止するための制限が適用されます。無料版のすべての機能が無制限になったわけではない点には注意が必要です。

FreeおよびGoユーザーには、難しい質問に対してモデルにより長く考えさせる「Think」機能も導入されます。
ThinkでもGPT-5.6 Lunaが使われ、通常の会話から必要に応じてより深い推論へ移行できる仕組みです。
一方、より高性能なGPT-5.6 Solや推論量を調整する機能は、主にPlus、Proなどの有料プランを対象としています。

OpenAIは、金融・医療・法律について事実確認が必要な質問を用いた内部評価で、少なくとも1つの事実誤りを含む回答が、従来のGPT-5.5 Instantと比べてGPT-5.6 Lunaでは約62%少なかったと報告しています。
ただし、これはOpenAI自身が設定した評価による結果です。
個々の医療相談や専門的な質問で、常に正しい回答が得られることを保証するものではありません。

無料ユーザーが比較的新しいモデルを継続的に利用できるようになれば、医療従事者や学生が、情報整理、学習、文章作成、業務上のアイデア出しなどにAIを試す機会は広がると考えられます。
一方で、生成AIの利用機会が増えるほどほどほど、回答の出典確認や個人情報情報情報の入力防止といった基本的なリテラシーも重要になります。
特に診療判断では、回答品質の向上を理由にAIの内容をそのまま採用せず、原典や専門家による確認を続ける必要があります。

参考:OpenAI・GPT-5.6 Lunaの無料ユーザー向け提供拡大


中国発AIエージェント「Manus」、Meta傘下から再独立へ――一部ユーザーはデータ移行が必要

中国で創業し、シンガポールを拠点としてきたAIスタートアップManusは2026年8月11日、米Metaから分離し、独立企業としての運営を再開すると発表しました。
Manusは、複雑なタスクを自ら計画し、ウェブ操作や資料作成などを連続して実行する汎用AIエージェントとして、2025年に注目を集めたサービスです。

Metaは2025年12月29日にManusを買収しました。買収額は公表されていませんが、Reutersは20億ドル規模だったと報じています。
しかし、中国国家発展改革委員会傘下の外商投資安全審査工作機制弁公室は2026年4月27日、外資によるManus買収を禁止し、当事者に取引の撤回を求める決定を公表しました。
その後、両社は買収の解消と運営の分離を進めてきました。

分離に伴い、規制上の要件に該当する一部のユーザーについて、2025年12月29日以降に生成されたデータが8月23日から24日にかけて削除されます。
対象者は事前にデータをバックアップし、8月25日以降に復元する必要があります。Manusは、対象となる利用者にアプリ内通知やメールで案内するとしています。
今回の措置は情報漏えいやセキュリティ事故によるものではなく、Metaからの分離と規制対応に伴うものです。

医療分野との直接的な関係は限定的ですが、AIサービスを導入する医療機関にとっても無関係ではありません。
サービス提供企業の買収や分離、規制当局の判断によって、保存データの移行、アカウントの一時停止、利用条件の変更が発生する可能性があるためです。
業務上重要なデータをAIサービスだけに保存しないことや、定期的なエクスポート、提供企業とデータ保管地域の確認といった対策が求められます。

今回の事例は、AI企業の価値がモデルや人材だけでなく、ユーザーデータや技術の移転とも密接に結びついていることを示しています。
AIサービスを選ぶ際には機能や精度に加えて、事業継続性、規制リスク、データの持ち出しや復元が可能かという観点も重要になります。

参考:Manus・ユーザー向け発表
参考:中国国家発展改革委員会・安全審査決定


今週のまとめ

今週取り上げた3件からは、生成AIの普及が「モデル性能の向上」だけでは語れなくなっていることが分かります。
AlibabaのQwen3.8-Maxは、巨大なモデルと画像・動画理解、長時間の自律実行を組み合わせ、AIが単発の質問に答える存在から、研究や業務を継続的に進めるエージェントへ発展していることを示しました。

OpenAIは、最新世代のモデルと無制限のテキストチャットを無料ユーザーにも広げ、生成AIを利用できる層をさらに拡大しています。
一方、Manusの再独立は、高度なAIサービスであっても、国際的な規制や企業間取引によって提供体制やデータ管理が大きく変わり得ることを示しました。

医療分野でAIを活用する際には、性能や利便性だけでなく、結果を人が検証できる仕組み、患者情報を守る運用、サービス変更時にデータを移行できる体制まで含めて評価する必要があります。
AIの能力が高まり、利用しやすくなるほど、導入する側のガバナンスがより重要になると考えられます。

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