【26/8/21】週刊 AI関連ニュースまとめ③

今週はニュースを3本に分けてご案内いたします。

目次

Anthropic「Claude Opus 5」公開――2026年IMO問題で満点相当、科学研究能力も向上

Anthropicは2026年7月24日、コーディングや知識業務、科学研究などの能力を強化した高性能AIモデル「Claude Opus 5」を発表しました。
同社の最上位モデルClaude Fable 5に近い性能を、より低いコストで提供するモデルと位置づけられています。

特に注目されるのが数学的推論能力です。
Anthropicが2026年の国際数学オリンピック(IMO)で出題された6問を用いて評価したところ、Claude Opus 5は満点に相当する42点を獲得しました。
2026年大会の金メダル基準は29点であり、大きく上回る結果です。
評価では外部ツールやエージェント用の仕組みを使用せず、各問題について4件、合計24件の独立した解答を生成し、すべてが正解と判定されたとしています。

コーディングや業務遂行能力も向上し、Frontier-Bench v0.1では他の評価対象モデルを上回りました。
CursorBench 3.2では、最高設定時にFable 5のピーク性能との差が0.5%以内となったほか、ARC-AGI 3、Zapier AutomationBench、OSWorld 2.0などでも高い性能が報告されています。

科学研究分野では、構造生物学、有機化学、バイオインフォマティクスを含む生命科学系評価の全項目でOpus 4.8を上回りました。
スペクトルデータから分子構造を推定する課題では10.2ポイント、タンパク質の配列変異による機能変化を予測する課題では7.7ポイント改善しています。
生命科学研究における文献分析や仮説検討、データ解析を支援する可能性が注目されますが、いずれも評価課題上の結果であり、実際の研究成果や臨床性能を直接示すものではありません。

Claude Opus 5はClaude.ai、Claude Code、APIなどで提供され、API価格は入力100万トークン当たり5ドル、出力100万トークン当たり25ドルです。
通常版の約2.5倍の速度で動作するFast modeも用意されています。

参考:https://www.anthropic.com/news/claude-opus-5


OpenAI、次期モデル「Astra」の一部開発を一時停止――「Critical」級サイバー能力の可能性を評価

OpenAIは2026年8月7日、開発中の次期AIモデル「Astra」について、予備的な内部評価で高度なサイバーセキュリティ能力が確認されたことを受け、一部の社内活動を一時停止したと発表しました。
エージェント型コーディングとサイバーセキュリティの能力が大幅に向上し、同社のPreparedness Frameworkにおける最上位の「Critical(重大)」レベルに達している可能性を、現時点では排除できないと判断しています。

Criticalレベルとは、人間の介入なしに多数の堅牢な実世界システムを対象とした実用的なゼロデイ攻撃手法を発見・開発できる能力や、大まかな目標だけを与えられた状態で、新たな攻撃戦略を立案し、最初から最後まで実行できる能力を指します。
ただし、Astraが実際にこの基準を満たしたと確定したわけではなく、自律的なゼロデイ攻撃に成功したことが確認されたわけでもありません。
暫定評価の結果が高かったため、Critical能力を持たないとは否定できない段階です。

OpenAIは、強化されたセキュリティ要件を満たしていないAstra関連の社内活動を停止し、隔離されたテスト環境、ネットワークやツールへのアクセス制限、モデルウェイトの保護・暗号化、サンドボックス実行、リスクの高い行動を検知・中断する監視体制などを導入しています。
政府機関やAI安全性団体とも連携して評価を継続する方針です。

直前に公開されたGPT-5.6シリーズのサイバー能力は「High」と評価されており、Criticalには達していませんでした。
今回の対応はモデル開発の中止ではなく、より厳格な管理下へ移行する措置です。
医療機関もサイバー攻撃の重要な標的であるため、高性能AIによる防御支援への期待と同時に、攻撃の自動化や高度化を前提としたセキュリティ体制を検討する必要性が高まっています。

参考:https://openai.com/ja-JP/index/responding-next-frontier-critical-cyber-capabilities/


OpenAI、ChatGPTに「Computer History」を導入――Mac上の作業履歴をChatGPTとCodexが参照

OpenAIは2026年8月13日、macOS版ChatGPTデスクトップアプリに、PC上の作業履歴をChatGPTやCodexが参照できる新機能「Computer History」を追加しました。
対象はChatGPT Pro、Business、Enterpriseユーザーで、欧州経済領域(EEA)、英国、スイスでは現時点で提供されていません。

Computer Historyは、ユーザーが許可したアプリやWebサイトでのクリック、文字入力、キーボードショートカット、アプリの切り替えなどを記録し、定期的にテキストとして要約します。
要約はタイムラインやMemoryとして保存され、「休憩前に何をしていたか」「先ほど見ていた資料はどこにあるか」といった質問への回答に利用できます。
繰り返し行われる作業を検出し、SkillやAutomationの候補として提示することも想定されています。

従来の研究プレビュー「Chronicle」を再構築した機能ですが、スクリーンショットや画面録画、マイク入力、システム音声は記録しません。
ブラウザのプライベートモードも対象外です。
機能は初期状態では無効で、記録するアプリやWebサイトの指定、一時停止、履歴の確認・削除が可能です。
BusinessとEnterpriseでは、管理者が利用を許可したうえで、各ユーザーが個別に有効化する必要があります。

操作イベントはMac上に一時保存され、最大48時間で削除されます。
Memoryを生成する際にはOpenAIのサーバーで一時的に処理されますが、法令上必要な場合を除いて処理後に保持されず、イベントファイルはモデル学習にも使用されません。
一方、生成されたMemoryはMac上に暗号化されていないMarkdownファイルとして残るため、健康情報、金融情報、個人情報を扱うアプリは対象から除外することが推奨されています。
Webサイトなどに埋め込まれた悪意ある指示がAIの文脈へ入り込む、プロンプトインジェクションのリスクにも注意が必要です。

医療機関では、診療録や患者情報、院内コミュニケーションを扱うPCで個人の判断だけによって有効化することは適切ではありません。
記録対象、端末管理、データ処理、患者情報の取り扱いについて、組織として利用可否と運用ルールを検討する必要があります。

参考:https://learn.chatgpt.com/docs/customization/computer-history


Google「Gemini 3.7 Flash」公開――コーディング・エージェント性能を強化

Googleは2026年8月13日、コーディングやAIエージェント向けの新モデル「Gemini 3.7 Flash」を公開しました。
Gemini 3.6 Flashの発表からわずか3週間での更新で、ソフトウェアエンジニアリング、ナレッジワーク、Web開発を中心に性能が改善されています。

Google DeepMindのモデルカードによると、Artificial Analysis Intelligence Indexは56で、Claude Sonnet 5の55、GPT-5.6 Terraの57と近い水準でした。
プロダクションコードの品質を評価するFrontierCode 1.1では43.6%、Web開発を評価するCode ArenaではElo 1588となり、比較対象のClaude Sonnet 5やGPT-5.6 Terraを上回っています。
一方、長時間のソフトウェア開発を評価するDeepSWEでは65.3%でGPT-5.6 Terraの69.6%を下回り、GDPVal-AA v2でも他社モデルが上回るなど、用途によって優劣は異なります。

バイオサイエンスを含む専門領域でも改善が報告され、複雑な文書処理を評価するGDP.pdfではGemini 3.6 Flashの22.0%から34.0%へ向上しました。
BioMysteryBenchやLABBench2でも前世代を上回っています。
ただし、これらは研究推論や文書処理に関するベンチマークであり、医療現場での診断精度や安全性が検証されたことを意味するものではありません。

Gemini 3.7 Flashは2026年12月31日まで、入力100万トークン当たり0.75ドル、出力100万トークン当たり3.75ドルで提供されます。
2027年1月1日以降は、それぞれ1.50ドルと7.50ドルになる予定です。
Gemini API、Google AI Studio、Google Antigravity、Gemini Enterpriseなどで利用でき、パーソナルAIエージェント「Gemini Spark」にも導入されています。

高速・低価格を特徴とするFlashクラスが、他社の上位モデルに近い性能領域へ到達している点が今回の注目点です。
医療・研究機関にとっても、文献や専門文書の処理、業務フローの自動化を比較的低コストで試せる選択肢が増えつつあります。

参考:https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/introducing-gemini-3-7-flash/


今週のまとめ

今週は、高性能AIの能力向上と、それに伴う安全管理や情報ガバナンスの重要性が同時に示されました。
Claude Opus 5やGemini 3.7 Flashでは、数学的推論、コーディング、生命科学研究、専門文書処理などの性能が向上し、高度な研究・業務を支援するAIの選択肢が広がっています。

一方、Astraのサイバー能力をめぐる対応は、モデルの能力評価に応じて開発環境そのものを見直す段階に入ったことを示しています。
Computer Historyも継続的な業務支援に役立つ可能性がある反面、機微情報の記録やプロンプトインジェクションといった新たなリスクを伴います。
医療分野でAIを活用する際には、モデル性能だけでなく、データの保存場所、アクセス範囲、監視体制、組織としての利用ルールまで含めて評価することが一層重要になっています。

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