Midjourney、全身超音波CT「Midjourney Scanner」を発表
画像生成AIサービスで知られる米Midjourneyは、新組織「Midjourney Medical」の設立とともに、全身超音波トモグラフィ装置「Midjourney Scanner」の開発構想を発表しました。
同装置は、X線やMRIのような放射線や強力な磁場を用いず、水中を伝搬する超音波によって全身の三次元画像を取得することを目指しています。
利用者は水槽内へ降下する台に立ち、約50万個の音響素子を備えたリングを通過します。
そこで取得された膨大な超音波データを大規模計算基盤で解析し、体内構造の3Dマップとして再構成する仕組みです。
同社は60秒以内で全身撮像を完了し、MRIに近い品質の画像を現在より大幅に高速で生成することを目標に掲げています。
ただし、これらは現段階では開発目標であり、MRIと同等の診断性能が臨床試験で実証されたわけではありません。
技術面では、携帯型超音波機器メーカーであるButterfly Networkの半導体型超音波モジュールを採用しています。
また、取得した超音波画像に対してAIによるセグメンテーションを実施し、筋肉、脂肪、臓器などの組織を識別して体組成マップとして可視化します。
これは画像生成というより、画像内の構造を認識・分類する技術です。
さらに、物理モデルと機械学習を組み合わせることで、画像再構成の高速化やノイズ低減も目指しています。
興味深い点として、同社は初期展開先を病院ではなく「Midjourney Spa」と呼ばれる温浴施設として構想しています。
リラクゼーション体験の中で身体データを取得することで、健康管理への心理的ハードルを下げる狙いがあります。
一方で、診断性能の検証、FDA承認、安全性評価、データ管理体制の整備など、多くの課題が残されており、今後の臨床研究の進展が注目されます。
参考:
https://x.com/midjourney/status/2067421950314688759
日本政府、AI悪用対策を強化する基本計画改定案を公表
日本政府は、「人工知能基本計画」の改定に向けた素案を公表し、AIの安全利用と国際競争力強化を両立する方針を示しました。
今回の改定では、高性能AIがサイバー攻撃や偽情報生成に利用されるリスクへの対応が大きなテーマとなっています。
近年のAIは、脆弱性の探索や攻撃手法の自動化などを支援できるレベルに達しつつあり、政府はこうした脅威に備える必要性を強調しています。
具体的には、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)を中心に安全性評価を進めるほか、政府機関のシステムに対する脆弱性確認や研究開発を推進します。
また、海外の政府機関やAI開発企業、ソフトウェア事業者との情報共有を強化し、サイバー攻撃やセキュリティインシデントに関する情報を迅速に交換できる体制づくりを進める方針です。
さらに、生成AIによる偽画像・偽動画・偽音声への対策も盛り込まれました。
AI生成コンテンツを識別する技術や電子透かし技術、コンテンツの真正性を検証する仕組みの研究開発を支援するとしています。
医療分野においても、画像や診療情報の信頼性確保は重要な課題であり、こうした技術は今後の医療AI活用にも関係してくる可能性があります。
また、素案では「自律行動型AI」にも言及されています。
人間が与えた目標に基づいて計画を立て、複数の作業を自律的に実行するAIは、行政、産業、防衛、研究開発など幅広い領域で活用が進むと予想されています。
政府は、こうしたAIの活用能力が今後の国力に直結するとの認識を示しており、安全性を確保しながら積極的な導入を進める方針です。
理化学研究所、AI for Science向け新スパコン「理究(RIKYU)」を発表
理化学研究所は、AIを活用した科学研究基盤として整備を進めている新しいスーパーコンピュータの名称を「理究(RIKYU)」に決定したと発表しました。
名称には、自然界の原理や法則である「理」を、AIとハイパフォーマンスコンピューティングによって「究める」という意味が込められています。
全国から寄せられた1,000件を超える応募の中から選定され、親しみやすさやAI for Scienceの理念との親和性が評価されたといいます。
理究は、神戸市の理研神戸地区に導入されるAI学習・推論向けの大規模計算基盤です。
NVIDIA Blackwell世代GPUを1,600基搭載し、AI計算に適したFP8演算では15EFLOPS超という極めて高い性能を実現します。
近年急速に発展している大規模AIモデルや科学基盤モデルの開発を支える重要なインフラとなる見込みです。
理究の特徴は、既存のスーパーコンピュータ「富岳」と補完関係にある点です。
富岳は高精度な科学シミュレーションを得意とする一方、理究はAIの学習や推論に特化しています。
両者を連携させることで、シミュレーションとAIを融合した新しい研究手法の実現が期待されています。
特に、AI for Scienceの分野では、研究データの解析、仮説生成、実験設計、知識統合といった研究プロセス全体をAIが支援する流れが加速しています。
創薬、生命科学、材料開発など医療・ヘルスケア領域との関連も深く、将来的には医療AIモデルやデジタルツイン医療の研究基盤として活用される可能性があります。
2026年7月の運用開始後は、国内外の研究者に広く利用される予定です。
参考:
https://www.riken.jp/pr/news/2026/20260619_1/index.html
今週のまとめ
今週のニュースからは、「AIの社会実装」「AIガバナンス」「AI研究基盤」という3つの大きな潮流が見えてきます。Midjourneyは医療画像分野への新規参入を通じてヘルスケア市場への挑戦を示し、日本政府はAIリスクへの制度的対応を強化しようとしています。
そして理研は、次世代のAI科学研究を支える計算基盤の整備を進めています。
医療AIの発展は、アルゴリズムだけでなく、規制、データ、計算資源といった周辺環境の整備によって加速します。
今回の3つのニュースは、それぞれ異なる立場からAIの未来を形作る動きとして注目されるでしょう。
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